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ファンタジーの「社会的養護」はもういらない

「セックスワークサミット2017秋 」第3部レポート 第4回

●「ドラマ化できない現実」と向き合う

 失敗の過程の中でどれだけ子どもが成長して、次につなげていけるのかを考えるのが児童福祉ではないでしょうか。過保護になりすぎると、結局子どもの可能性を摘んで成長発達の機会まで奪ってしまう。子どもの弱いところばかりを見るのではなく、もう少し子どもたちの生き抜く力とか、強さ、可能性みたいなものを信じてほしいなと思います。

 分かりにくいものを無理に分かりやすくしようとしない、安易な問題解決や被害救済のストーリーに結び付けようとしないことが大事です。性風俗やJKビジネスと社会的養護や貧困を結びつけて、物語性ばかりが強調される風潮に危惧感を抱きます。もちろん、多くの人に物事を伝えていくための取組もソーシャルアクションとして大事だと思うのですが、過度にセンセーショナルな報道の仕方には危うさを感じます。

 支援者が物語に囚われてはいけない。物語に囚われた瞬間に、その人の脚本に沿った支援が始まり、目の前の当事者の声が聞こえなくなる。現実に困難を抱える子どもたちの物語は、とてもドラマ化できないようなものばかりです。オチが無い。ヤマも無い。あるいはずっとヤマばっかりだとか。でもそれをありのままに受け止めて、都合よく解釈して綺麗にまとめようとしないことが大切だと思います。

 それと子どもと関わる上で一番大事なのは、やはり支援者自身が明るく、元気に子どもと接することだと思います。子ども支援関係の人たちは、本当に皆さん一生懸命で真面目です。中には、「自分が犠牲になってもこの子だけは」という思いで関わる人もいる。

 その思いはとても尊いのですが、子どもからすると「重たい」のですよね。それに支援者が倒れてしまったら、そこでその支援は終わりです。また強すぎる思いは、パターナリズムを助長したり、あるいは何かの拍子に反転して負の気持ちになったりする危険がある、それがその子への攻撃になってしまったら、目も当てられなくなってしまう。支援者自身が楽しく元気でいられることは大切です。

「子どもたちの居場所がない」とよく言われますが、支援者がそもそも子どもたちの居場所を無意識に制限して奪ってしまってはいないでしょうか。社会的養護がそもそも非行少年や性風俗の世界で働こうとする子どもたちを排除している側面はないでしょうか。

 都合の悪いものを排除して、きれいなものだけで作られた社会的養護はファンタジーにすぎないと思います。特定の支援者に依拠することなく、どんな子どもであっても社会全体で排除することなく受け入れ育てていける持続可能な仕組み。それができて初めて、社会的養護と名乗れるのではないかと私は考えます。

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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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